栄光からの挫折、その後の完全復活

NBA史上最年少でシーズンMVPを獲得したデリック・ローズ。
2010-2011シーズンMVPを史上最年少となる22歳6ヶ月で勝ち取りました。

地元シカゴ出身。マイケル・ジョーダンの引退後、低迷していたシカゴ・ブルズを背負う逸材としてファンの期待を背負って大活躍します。
191cmとNBAの中では小柄ながらもキレのある鋭いドライブジャンプ力を駆使して、フィジカルで勝る猛者たちから得点を量産します。
バスケ初心者から見ても、ひと目でかっこいいと思わせる華麗なプレーで、一気にファンの心をわしづかみにしました。
しかし、順風満帆に進んでいた彼のキャリアを悲劇が襲います。

怪我の悪夢

最年少MVPを獲得した翌年、さらなる期待を一身に受けて臨んだNBAプレーオフ。
ローズは悪夢に見舞われます。

ファーストラウンド初戦で、膝前十字靭帯断裂という大怪我に見舞われてしまったのです。
翌シーズンは怪我の治療のため、1試合もゲームに出場することなく終わりました。

その翌シーズン、2013-14シーズンにようやく復帰を果たしました。
しかし、開幕からわずか11試合目で、今度は右膝の半月板損傷を負い2013-14シーズンもプレイオフまでローズが復帰することはありませんでした。
怪我しがちなプレーヤーにチームの未来を任せるべきか、ファンの間でも物議を醸すようになってしまいました。

シカゴからの旅立ち

ローズ中心のチームでは、チャンピオンリングを獲得できないと判断したブルズはローズをニューヨーク・ニックスにトレードしました。
この出来事は彼にとってショッキングでした。
生まれ育った土地のチームでスタープレーヤーとして活躍していたのにも関わらず、放出されてしまったからです。
しかし、見方を変えれば心機一転し、新たな土地で再チャレンジするチャンスを得たとも言えます。

当時、ニューヨーク・ニックスにはスーパースターであるカーメロ・アンソニー、若きビッグマンのクリスタプス・ポルジンギスがいました。
万年ドアマットチームになっていたニューヨーク・ニックスの新たな希望として、シカゴ時代と同様の期待を込められました。

しかし、新天地でのローズは、新たな土地であるニューヨークの環境に適応できずに苦しみました。
その影響もあってか、自身のプレーがチームの成績に結びつきませんでした。
さらに追い打ちをかけるように、2017年4月に左膝の半月板を断裂する重傷を負い、移籍1年目は不本意な形で終了しました。

キャブスへの移籍、そしてジャーニーマンに。

バスケットボールのビックマーケットであるニューヨークにおいて、結果を残さない限り居場所はありません。
ニューヨークでも見切りをつけられて、ベテランミニマムという屈辱的な形でクリーブランド・キャバリアーズへ移籍します。

当時のキャブスはレブロン・ジェームズと双璧をなすスーパースターのカイリ―アービングが移籍し、戦力が大幅にダウンしました。
大きな穴が空いたキャブスは、その穴を埋めるためにローズアイザイア・トーマスを獲得しました
新戦力の二人と絶対的エースである、レブロン・ジェームズ。彼らがどのようなゲームを展開するのか期待が集まりました。
しかしまたしても怪我がローズを襲います。
シーズン序盤こそよかったものの再度、ケガに見舞われ、ローズは多くの試合を欠場しました。

キャブスはシーズン途中に大規模なトレードをすすめ、ローズもその中の1人としてユタ・ジャズに放出されます。
追い打ちをかけるようにジャズはローズを解雇。無所属になったローズは、レギュラーシーズン残り数ゲームのところでなんとかティンバーウルブズと契約しました。

ティンバーウルブズでの復活

シーズンMVP獲得経験のあるローズにとって、トレードや解雇は屈辱的な出来事でした。
何度も打ちのめされてきたローズにとって、ウルブズへの加入は彼の復活の転機となりました。

ティンバーウルブズでは、かつてシカゴ・ブルズでの恩師トム・ティボドーと再会。
また、NBA全体から尊敬の対象であり同じくシカゴ・ブルズでの戦友のタージ・ギブソン、さらにはルオル・デンジミー・バトラーと共闘することになりました。

かつて、自身の才能を認め伸ばしてくれた指揮官とかつての戦友のサポートもあり、ローズはシックスマンとして安定した活躍を見せます。

多くの怪我の原因となった爆発的なスピードを活かしたドライブ一辺倒ではなく、ミッドレンジゲーム外からのシュートに磨きをかけるなど、
選手として1枚も2枚も成長しました。
そして、世界中を感動させるあのゲームを迎えます。

キャリアハイ、怪我と屈辱を乗り越えた日

2018年10月31日、ユタ・ジャズ戦。
ローズはこの試合でキャリアハイとなる50得点を記録し勝利に貢献しました。

負傷で欠場したスタメンポイントガードのジェフ・ティーグの代わりに先発出場したローズは、50得点のほかに6アシスト、4リバウンド、2スティール、1ブロックと大活躍。
ジャズの最後のシュートもブロックし、攻守にわたりチームに貢献しました。
まさにこの試合は、ローズの試合。
試合終了後に「MVP」コールが沸き起こるなか、感情を爆発させたローズ。
チームメイトがローズを長い時間祝福した姿は世界中を感動させました。

試合後のインタビューでも涙を見せ、彼の怪我と度重なる苦難を克服した姿に多くのNBAプレーヤーが反応。
かつてのスーパースターの復活を喜びました。

度重なる怪我。普通のプレーヤーなら早々に引退してもおかしくありません。
大好きなバスケから離れ、つらいリハビリに励みながらも彼の目はわずかに見える光を見据えていました。
ローズのキャリアはスポーツ選手のみならず、現代を生きるすべての人の励みになるはずです。

つらいときはローズの50点試合を見返しましょう。

現在、そしてこれから

彼は現在、かつて在籍したニューヨーク・ニックス(2022年6月時点)に所属しています。
指揮官はトム・ティボー。盟友タージ・ギブソンも所属しています。

若手選手が中心のニックスにて、メンター的な働きを率先して行っています。
ローズが加入してからニューヨーク・ニックスは大躍進。
8年ぶりとなるプレーオフ進出を果たしました。
2021−2022シーズンの序盤にローズは負傷してしまい、ニックスも低迷。
昨シーズンから続けてのプレーオフ進出を逃しました。

ローズのリーダーシップ高いバスケIQがこれからのニューヨーク・ニックスの躍進の鍵であることは間違いありません。
これからもローズの活躍に注目しましょう。
最後は、50点試合後のインタビューの一節をご紹介します。

「バスケットボールが自分を離してくれない。
自分に限界は作らない。今すぐに辞めようと思えば、そうすることもできる。
でも、自分には子供がいるんだ。息子と娘に、いつかこう言えるようになりたい。
『言い訳は聞かない。不平不満を言わず、自分で対処しろ。自分がやりたいこと、やるべきことをやるんだ』とね」


イツワノ

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