日本航空の再建を成し遂げた男の仕事観
渦中の栗を拾った意味
2010年、戦後最大の負債額を抱え日本航空(JAL)が経営破綻しました。
稲盛和夫さんは再建のためにJALの会長を引き受けてほしいと政府から再三再四、依頼されました。
しかし航空業界のことは全くの素人であり、最初は固辞していたといいます。
しかし、JALを救うことには3つの大義があると思い至りました。
- 残された3万2千人の従業員の雇用を守れる。
- 日本経済全体への悪影響を食い止めることができる。
- ANAとの正しい競争環境を維持して、国民の利便性を図る。
という3つの大義です。
世のため人のために尽くすことが人間として大切だという信念から、勝算があるわけではないけれども、必死に頑張ってみよう。そう思い、稲盛さんは、火中の栗を拾ったのです。
稲盛和夫の仕事観
稲森さんがJAL再建を担い、結果として2000億円に迫る利益を出す会社と生まれ変わり、再上場を果たすことができました。
そんな偉業を成し遂げた稲盛さんの仕事観は私たちを鼓舞する力があります。
80歳のコンビニ飯
JAL再建に努力している日々はほとんど毎日、夜9時、10時まで食事を取らずに仕事し、終わった後に近くのコンビニに行っておにぎりを2つ買ってホテルの部屋で食べる生活を続けたそうです。
JAL再建に携わっている時の氏のご年齢は80歳。その心身の苦労は筆舌に尽くしがたいものがあります。
再建を果たせた理由
JALの再現を成功させ、その日々を振り返り、稲盛さんは語ります。
やっぱり人生で1番大事なものと言うのは、1つは、どんな環境にあろうとも真面目に一生懸命生きること。
ただ1つだけ自分を褒めるとすれば、どんな逆境であろうと不平不満を言わず、慢心をせず今目の前に与えられた仕事、それが些細な仕事であっても、全身全霊を打ち込んで、 真剣に一生懸命努力を続けたことです。
全生命をかける努力、世界中の誰にも負けない努力をしていれば、必ず時間とともに大発展を遂げていくものと信じて疑いません。
利他の心
人間は常に自分が良くなりたいという思いを本能として持っていますけれども、やはり利他の心、皆を幸せにしてあげたいということを強く自分に意識して、それを心の中に描いて生きていくということです。
利他とは他人に利益を与えること。 自分を犠牲にして、他人のために尽くすことを言います。
いくら知性を駆使し、策を弄しても、自分だけが良ければいいという低次元の思いがベースにあるのなら、神様の助けはおろか、周囲の協力も得られないことでしょう。
様々な障害に遭遇し、挫折してしまいます
だからこそ、物事を成功させるためには「利他の心」が不可欠だと稲森さんは語ります。
稲盛さんにとってJAL再建に関わることは、これまで築き上げた経営者としての名声を汚してしまうリスクがありました。
しかし、その危険を冒してまでJALの再建に参画したのは、稲盛さん自身の利益・名声よりも、他人のために国のために尽くす利他の精神を持ち、実践できたからなのではないでしょうか。