努力と運の関係性

学者・評論家・作家として活躍した渡部昇一氏。
輝かしい彼のキャリアの裏にはつらい大学時代の経験と超克の物語がありました。

親の失業、水をかぶって勉強三昧。

大学の夏休みに実家に帰った渡部氏。なんと親父が失業していたそうです。
翌年からの授業料の目処がつきませんから絶対絶命です。
この逆境に渡部氏は、

「特待生になって授業料免除になるしかない。」

と一念発起しました。
朝5時に起きて、水をかぶって一生懸命勉強したそうです。

留学にいけなくても飄々と。

そんな日々を続けていると、大学2年生の頃にアメリカ留学の話が転がってきました。
渡部さんは英文科で1番の成績でした。当然自分が留学に行けると思っていたですが、なんと選ばれませんでした。
落選の理由は貧乏だったから。
親の失業により貧乏になり、友達と遊びに行くこともできず、洋服も戦時中のものを着ていた渡部さん。
アメリカ人の先生が「渡部は勉強ができても『American way of life』つまり社交性がない」と認めてくれなかったのです。
大いに落ち込んでもいいような出来事。当時を振り返り渡部さんは語ります。

「お金もないですし、しょうがないやと。特待生になり続けるために3年生、4年生と、100点をとりつつける努力だけを一生懸命やりました。」

コツコツ努力することで開ける道

その頃、ある英語の老大家の先生が「英語学はイギリスよりドイツの方が50年進んでいる」と話していたそうです。
渡部さんはびっくりしました。そして、英語の科目の比重が非常に重い中、ドイツ語の授業も取りました。
英語の勉強だけでもハードに続けている中で、さらにドイツ語の勉強。渡部さんの努力量には頭が下がります。
4年間、渡部さんは英語もドイツ語も勉強を続けました。
それは大学院に進んでも変わりません。ドイツ語の勉強だけはやめませんでした。
ドイツ語の勉強を続けていくうちにドイツ語の辞書を引くのが嫌になった渡部さん。
「簡単にドイツ語をマスターする方法はないか?」と古本屋で見つけたのがスマイルズの『Self-Help』のドイツ語訳の本。
『自助論』と訳され日本でも時代を超えて人気の本です。
渡部さんはこの『自助論』の英語版を何度も読んでいたそうで、英語版とドイツ語版を並べて読めば辞書を引かなくても済むんじゃないかと思いつきました。
それから、毎晩10分、15分くらい並べて読むことを続けました。
大学院を卒業して助手になり、ある雑務で大学委員長に呼ばれたときに転機は訪れました。
その人はドイツ人でした。渡部さんにこう話しました。
「君、ドイツ語もやっていたね。これを訳してみたまえ」と雑誌を出されました。
それを見たら不思議なことに昨晩読んだ『Self-Help』にあった、普通には訳せない難しい接続詞がそこにありました。
そして、完璧に訳しました。
それを見て大学委員長は「君、ドイツ語できるんだね。ドイツに留学するか?」と。
渡部さんのドイツ留学が決まりました。
このことを渡部さんは回想します。

6年以上、誰からも褒められずぽつらぽつらやっていて、昨夜見た単語が出されました。
これは確率では説明できません。一つ一つの地道な努力が、不思議なくらい偶然つながって生きてくるんですよ。
まぁ、天からはしごが降りてきたような感じなんですね。

さらに、成功する方法についても語ります。

天というのは不思議でね、いちど梯子を下ろすと、下ろす癖がつくんです。
それで天から降りてくるはしごですけど、ただコツコツ勉強をやれば良いと言うのでは、不十分だと思うんですね。
それで付け加えれば、虫の良いところを考えなさいと。
コツコツやると憂鬱になる人がいるんです。
神様はね、憂鬱な人が嫌いなんですよ。
だから、虫のいいことを考えてね、好きなことをコツコツやりなさいと。
しかし、自分の仕事をサボってはダメだ。
普通の仕事は人一倍やりながら、内発的にやるものがあったならば、やりなさいよと言っているんですね。

実体験から導き出したこの成功法則には一定の説得力がありますね。
ぜひ、今この瞬間から新しいチャレンジをコツコツ続けませんか?

イツワノ

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