稲盛和夫が松下幸之助の「ダム式経営」講演で受けた衝撃

「ダム式経営」とは

松下幸之助が唱えた「ダム式経営」とは、川にダムをつくって水をためておくように、企業も余裕のある経営をしよう、という考え方です。
ダムがなければ、少し天候が狂っただけで洪水や干ばつが起きてしまいます。経営にも、変化に耐えられる「ダム」が必要だという教えでした。

講演の後の質問

この「ダム式経営」の講演の後、会場にいたある経営者が質問をしました(質問者が誰だったかは、資料によって異なります)。
「余裕のある経営が大事なのはわかります。でも、うちにはその余裕がない。どうすればダムがつくれるのか教えてください」

松下幸之助の答えは、次のようなものだったと伝えられています。

「そうですなあ、簡単には答えられませんが、やっぱり、まず大事なのはダム式経営をやろうと思うことでしょうな」

具体的なノウハウを期待していた聴衆の中には、拍子抜けした人も多かったようです。
ところが、客席で聞いていた稲盛和夫は、この一言に大きな衝撃を受けました。

稲盛和夫が受け取ったもの

のちに松下幸之助と対談した際、稲盛はこの時のことをこう語っています。

「そのとき、私はほんとうにガツーンと感じたのです。」
「“できる、できない”ではなしに、まず、“こうでありたい。おれは経営をこうしよう”という強い願望を胸にもつことが大切だ、そのことを松下さんは言っておられるんだ。」

余裕のない時代から「余裕のある経営をしたい」という強い願望をもって、毎日一歩ずつ歩いていけば、何年か後には必ずそうなる。簡単な方法を教えてほしい、というなまはんかな考えでは事業経営はできない――稲盛はそう受け止めたのです。

「まず、こうでありたいという強い願望を胸にもつこと」

いつ、どこでの話?(記録の注意点)

この逸話はとても有名ですが、講演がいつ、どこで行われたのかは、はっきりしていません。
稲盛本人は「京都での講演」と回想しており、PHP研究所のサイトでも「京都の中小企業経営者の講演会」とされています。一方で、1965年2月の関西財界セミナー(倉敷)での講演がその場ではないかという説が長く有力視されてきましたが、稲盛本人のスケジュール帳などから、この説は成り立ちにくいとする検証もあり、日時も場所も特定されていません。この記事でも、いつ・どこでの講演かは断定しないことにします。
また、松下幸之助の答えの言葉も、紹介する資料によって少しずつ表現が異なります。稲盛自身が寄稿した文章では、「そんな方法は私も知りませんのや。知りませんけれども、まず、余裕がなけりゃいかんと思わないけませんな」という形で紹介されています。
そのため、この記事では「一字一句の再現」ではなく、各資料が共通して伝える骨子をご紹介しました。

それでも、「できるかどうかより先に、どうありたいかを強く思う」という教えは、経営者でなくても、仕事や勉強にそのまま当てはめられるのではないでしょうか。

参考

稲盛 和夫の逸話一覧

イツワノ

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